岡 潔
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¥ 1,890
(ISBN : 4820542974, 1997-12)
海外旅行に効きます!
この本のもとになった、朝日新聞社「紫の火花」、毎日新聞社「春宵十話」を幼い頃、祖父母の家にあった古い本棚で見つけた。当然絶版で手に入らない。以来ずっと探していたのに見つからず。amazonでこれをみつけたときにはネットの威力に素直に感心した。米国型大量消費文化による日本型稀少文化の浸食を40年も前にすでに憂えていた。内田 樹は海外にもっていく本のリストに岡倉天心をいれていたが、僕はこの本をParisのホテルの薄暗い部屋の中で読んだ。日本という文化の神髄にvividに触れた気がした(拙い英語での表層的なコミュニケーションに飽きたせいもある)。自らの命と国益を天秤にかけることが愛国だと思っている(自称)ナショナリストの方々に読んでいただきたい。
(レビュー日:2007-10-10)
今なお通じる名著
文化勲章受賞時に天皇陛下から「数学とは?」と問われ、「魂を燃焼させること」と答えたという、希代の大数学者である岡潔氏のエッセイ集。
その多くは教育や世の中について語っているのですが、「情緒」を大切にすべきであり、その大切さを色々な語り口で述べています。
読んでみると仏教からの引用であるとか、著者が自分の経験から定義づけた言葉も多く、理解するのが難しい箇所も多々ありました。
しかしながら、そういった姿勢は氏が根っからの数学者であったことを感じさせるものだと思います。
それに、難しいと思う以上に「善行とは、見返りを求めない行為である」とか「教育とは自然に任せるべきであり、人はそれより落とさないことくらいしかできない。それを自分の思うう通りにしようと思うのは間違いである」という共感できる主張が多くあるので、読み進める上ではそれほど苦にはなりません。
これが書かれたのは1960年代前半とのことですが、今に当てはめてもハッとする部分が多くあります。
「情緒のない日本は60年後日本は消滅してしまう」と氏は述べていますが、その60年後まであと少し(10〜15年後)しかない。氏が大切にすべきという「情緒」は、現代の日本には失われていると思う(自分も含めて)ので、これをきっかけに自分のこと、子供の教育のことに意識していきたいと思いました。
読んでみて、その内容は藤原正彦氏の「国家の品格」、その視点は養老孟司氏の物の見方に通じるような気がしました。私にとっては「国家の品格」よりも教育に関してみにつまされる1冊でした。
是非子供を持った方、教育関係者に読んで欲しいと思います。
(レビュー日:2006-09-24)
天才の名著 春宵十話
「ただちに」を計るため、ストップウオッチをかまえて友人と連句を試み、すばやく連句をつけるのに十秒かかることがわかったので、「これで『ただちに』とは十秒だとわかった」というエピソードには驚いた。留学の時も、ソルボンヌの教授のガストン・ジュリアの講義を聞くためにフランスに決めた。「どの人がしゃべったかが大切なのであって、何をしゃべったかはそれほど大切ではない」というのも驚くべき発想である。
「発見の鋭い喜び」を読んでいて、かつてBBCが放送した「フェルマーの最終定理」を解いたアンドリュー・ワイルズの涙を思い出した。沸き上がる感動を抑えきれない歓びが実感を伴って表現されている。それは美しさへの感動であり、数学とは「美」であるのだと思わずにはいられない。心地良い波にゆられているような文章だった。名著と呼ぶにふさわしい。
(レビュー日:2006-01-16)
第一級の文学
この本の巻頭に納められた「春宵十話」が毎日新聞に連載された時、真っ先にかつ熱烈に反応したのは優れた文学者たちであった。60年代の前半のことである。この、分量にすればわずかなエッセイは直ちに薄い単行本として出版され、ベストセラーとなった。その後、立て続けに、講談社から「風蘭」が、朝日新聞社から「紫の火花」が、毎日新聞社から「春風夏雨」刊行され、いずれもベストセラーとなった。そして小林秀雄との対談は「人間の建設」として直ちに新潮社から出版され、大ベストセラーとなった。60年代の終わりに、小学館から5巻本としてこの数年の間に矢継ぎ早に出たエッセイがまとめられたのだが、全巻の校訂をやり、全巻の末尾に解説を書いたのは保田與重郎であった。
岡自身、芥川龍之介をこよなく愛読し、兄のように敬愛していたことをたびたび書いているが、寺田寅彦の作品に関しても同様であった。そして、おのずから、間接的に漱石を師と重んじ、熟読していた。一例を挙げるなら、晩年の漱石の書簡中にある次のような記述、午前中の創作活動が午後の休息の時の肉体に悦びを与えるのを例としている、を他に類の無い貴重な文献であると、特筆している。岡によるならば、これは「発見の鋭い悦び」なのであって、〈まるでなにか砂糖分が体内に長く残っているといった感じの悦びなのです。〉
(第二部 情緒 にある「いのち」の章の、文化と悦び、の節)
さらに、独自の芭蕉観、特に連句のそれは、志賀直哉等の大家を傾聴せしめたようだ。この本にはそれらがバランスよくまとめられている。
何を文学と見なすか議論は分かれるだろうが、この驚くべき数学者の知性が達成した文学的な営みは、日本近代文学において屹立していると私は思う。
(レビュー日:2004-03-07)
天才の感性とはこういうものか
と、実感させられる本です。言っていることが本当に純朴で
支離滅裂なので、この人は、生まれながらにして数学者であり、
数学以外は何もできない人だったんだなあと思わせられます。
そして、自然の真理はこういう人によって明らかにされるのだ
ということを強く感じさせられます。
中谷宇吉郎兄弟への強い友情と思慕、そして札幌で無為に過ごした
一夏の終わりに突然舞い降りた天啓の話に、心を打たれました。
(レビュー日:2003-05-26)