防衛大学校安全保障学研究会
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(ISBN : 4750503010, 2003-05)
理論中心のアカデミックな概論書
本書は安全保障について概論を述べたものである。教科書として、幅広い事項を凝縮しているため、それぞれの章が密度の濃い、読み応えのあるものになっている。「入門」とはあるものの、世界史、政治学の素養や、国際問題への関心がある人でないと完全な理解は難しい。本書が難しい場合、姉妹書の「安全保障のポイントがよく分かる本」を先に読めば、理解が容易になるだろう。
内容はいたって中立的・アカデミックなものであり、防衛関連の書籍にありがちなオピニオン的な要素は一切排している。また、事実をだらだらと書き並べただけの本でもない。時事解説的な要素は努めて抑えられており、全般的に理論とその分析を中心とした構成になっている。事実の描写を中心とした教科書には必ず賞味期限があるが、本書は比較的息の長い知識を付与してくれるものである。
私は本書を、大学院(修士)受験に際して、国際関係論の勉強の一助として使用した。ある程度国際政治学や安全保障を勉強している人にとっては、知識の整理や答案のまとめ方の参考といった使い方もできると思う。(院試という点では、中西・田中「新・国際政治経済の基礎知識」も参考になる)
唯一難点を挙げるならば、「安全保障学」そのものの実体、すなわち学問としての固有のディシプリンが見えにくいということである。それぞれの章で各論が述べられているが、どれも政治学、外交史、国際法、経営学などからの理論の”借り物”いう観が否めない。だが、これは将来的な課題というべきだろう。日本の高等教育に安全保障論が入ってきたのは最近のことである。今後、安全保障学が発展していくことを期待したい。
(レビュー日:2008-03-03)
安全保障「学」入門
安全保障研究におけるこれまでの成果を、教科書としてまとめた本である。
現象の説明より、理論に重点が置かれており、安全保障全般に対して深い
理解を与えてくれる。
日本における安全保障学のこれまでの扱いから見れば、本書が果たした
業績は大きい。戦争一般に関わる研究や言説がタブー視されがちである
なか、本書は学問的な切り口から問題を捉えているからである。
ただ、教科書としてのレベルは、これまでに多く刊行されている国際政治
学や政治学の教科書と比べると、低くなってしまったのが残念である。
各章がテーマ毎で分けられているため、安全保障学全体を貫く理念や、
学問としての体系的な展開を十分に示せていない。また、各章で執筆者が
異なるため、内容の重複も気になる。(特に集団安全保障の説明は、うん
ざりするほど何度も出てくる)
しかし、そのような点を差し引いても、本書には一読する価値があるとい
える。第2章の「戦争と平和の理論」では、諸理論の妥当性が事例研究を
通してどのように検証されてきたかを説明しており、安全保障学における
裾野の広さを見せている。感情論や思い込みが跋扈する分野であるが、知
的な議論をするためにも、このような基本書は歓迎できる。
(レビュー日:2007-09-25)
新しい「危機管理」の概念
この書籍は「安全保障」とは何なのか解説してくれる我が国で唯一の安全保障の入門テキストである。
本来は、国家防衛(国土を外敵からいかに守るか:国家安全保障)ですが、
今ではそこから派生して個人(人間の安全保障)や、非軍事的・軍事的手段以外に外交解決の提唱。
または軍事以外に災害やテロ(NBC)・感染症・経済・社会保障・治安・情報(IT)などの危機を国家がいかに対処するか(総合的安全保障・集団安全保障〜等)と枝分かれして今日に至っています。
すべての共通点は、「ある危機からいかに自分達(国・社会)を守るか」で、
言い換えれば新しい「危機管理」の概念であると思います。
ニュースでもよく聞く「安全保障」。
今後、官邸に「NSC国家安全保障会議」が設置すると思いますが、
軍事的以外の危機もすべて協議されることだと思います。
戦後、平和主義(非軍事であれば平和になる)を唱え、安全保障論はタブー視されていた。
しかし、冷戦以降の日本を取り巻く国際情勢は中東・アジア(中国や朝鮮半島)だけでなく、
テロという非対称な脅威まで対応していかなければならない。
その意味で、安全保障は私たちに直接かかわる問題であります。
生き残るためにも、お勧めしたい書籍です。
(レビュー日:2007-07-09)
安全保障とは何か
昨今、北朝鮮によるミサイル発射、そして核実験、中国の軍備拡張政策など日本を取り巻く安全保障環境は、現状を見るとかなり厳しい局面に立たされていると思う。北朝鮮のミサイル発射事件においては、「敵の基地を先制攻撃する」という議論も噴出した。また、核実験が実施されたときに、ある政治家は「日本も核武装すべきだ」との意見が物議を醸し出している。こういった意見や議論は、極端な感情任せの意見であって、安全保障という議論の枠組みに当てはめれば、冷静さを欠いた論議であろう。なぜ、このようになったのか、原因を考えてみると、戦後日本は安全保障に関することを考えてこなかったツケが今になって出てきたと思う。この功罪は、教育者、進歩的と言われる知識人、マスコミが安全保障に関する議論を封殺してきたことにある。彼らの言い分は、「安全保障に関する議論=戦争」という捉え方をするからに他ならない。こういった論調が健全な安全保障の議論を妨げ諸外国から見て遅れた状況を作り出している。
本書は、日本では数少ない安全保障について著述された本である。編集は防衛大学校安全保障研究会のメンバーで防衛大学校にて教鞭をとっておられる方が、それぞれの専門分野について分かりやすく安全保障について書かれている。安全保障の概念に始まり、戦争と平和はいかなる関係なのか、軍事力の意義とは何か、政治と軍事の関わりとは何かについて論述されている。日本の安全保障と国際社会における日本の位置づけを考える意味では一石を投じた本である。
(レビュー日:2006-11-03)
安全保障は
近年、北朝鮮問題や自衛隊の海外派遣を通じて我が国の安全保障に対する国民の意識が高まってきている。国民一人一人が我が国の安全保障について考え、議論することは非常に有意義なことであるが、議論の土台となる知識がマスコミの報道に基づくものであったりすると思想に偏りが出てくる。つまり、安全保障とは何であるかという普遍的な考えを知らずには有意義な議論ができないということである。本書は安全保障の普遍的な概念を丁寧に解説し、また、我が国の安全保障政策をわかり易く説明している。安全保障に関心を持っている方には、安全保障の基礎知識を偏りなく理解するうえで最適な入門書である。
(レビュー日:2004-05-23)