イマヌエル カント
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(ISBN : 4753102343, 2004-04-09)
読めない翻訳。買ってはいけない。
これはひどい訳である。肝心の所になる訳の分からない文章に
なってしまう。
例えば、p45。
普遍的な法に対する尊敬の念とはどんなものか。それは人間の好
き嫌いが奨励するようなどんな価値をも凌駕するような価値に対
する尊敬である、というところ。
「それは価値に対する尊敬の念である、そしてこの価値たるや、
傾向性によっていたく賞讃されているようないっさいのものの価
値を遙に凌駕する」となっている。
原文では関係代名詞で修飾されて「価値」という単語をなんと、
単独でまず訳しているのだ。
これでは「一般的な価値に対する尊敬」と読めてしまう。そし
て、関係代名詞の中身を、後に別の文章にしてしまった。そのめ
に、あくまで一般的な価値に、さらに別の意味が加えられたよう
に読めてしまう。これでは上記のような意味には取れない。
この翻訳には、こういう文法上のルーズさが至るところにあるの
で、日常的なことを描いた所は読めても、カントの言いたい中心
的な所はとても理解できないのだ。したがって、買ってはいけな
い訳である。
(レビュー日:2007-02-09)
カントの考え方を知るにはとても良い、本人が書いた本
カントといえば近代哲学のビッグネームで、三批判書(純粋理性批判、実践理性批判、判断力批判)は著名です。しかし、これらだけを普通の人が一人で読んでも、私の経験から、先ず何を言っているのか分からないと思います。
ところが、この本は、本人が書いた本であるにも拘らず何を言いたいのか、更にはどのような思考をしているのかが素人にも分かるのです。道徳論はカントの思想の中心だと思いますので、この本はとても貴重な本だと思います(日本語で文庫に収録されていて、薄くて安い)。
例えば、”無制限に善と見なされ得るものは、善意思の他にはない”と言う言い方のように、この本は、カントの中枢思想である道徳論の本質を端的に理解させてくれるし、更にはカントという人は普通の人の感覚、つまり常識を、言語によって研ぎ澄まして行くという方法で考えていったのだということを実感させてくれました。
(レビュー日:2006-07-16)
『知の世界遺産』
イマヌエル・カント(1724-1804)による、古今の倫理学における最重要文献が本著である。
カントといえば、三批判書がすぐに挙げられる(「純粋理性批判」(1781年#1)、「実践理性批判」(1788年)、「判断力批判」(1790年#1))。本書は、「純粋理性批判」の後1785年に初版が発行されているため、セオリーどうりに思想を捉えてゆく方には、「純粋理性批判」の後に読むのがよいかもしれない。しかしながら、同書は名うての難解さのために、挫折さえしてしまいかねない。そこで、市井一般において興味を持ったなら、いくつかの理由で、本書よりカント思想に入ってゆくのも悪くないと思うのである。
まず第一に、文意を一筋縄で理解できるわけには行かないけれども、文体は比較的取り付きやすいこと。第二に、カントらしい『論理の精確と概念の明晰』(「啓蒙とはなにか」I・カント著、岩波文庫p189)が十分見て取れること。そして第三に、小生にはカント哲学を貫くと思われる、「分を弁えた厳格さ、という視座」が(定言命法に象徴されるように)よく現れている気がすること、である。概略は、先に述べた視座を自らに課し、自らの内を探り、そして他者と、他者との関わりへと向かおうとするものである。とはいえ、『原論』である以上、理論的・理想的一般化に近いものと、イメージしてもらうのがよいかもしれない。
哲学の古典である以上、訳や版の問題、そして時代の影響は避けて通れない。この点については、十分注意して多くの優れた向学の士に耳を傾けたい。廉価な異訳もあるので、こちらも良いと思う。星5つというのは、原著の重要性に対しての評点なので、あしからず。
ともかく、「人間とはなにか」という問いを探る、大切な遺産である。
(レビュー日:2006-02-25)
翻訳の比較。
カントの本としては最も読みやすい部類に属するのだろうが、政治哲学の本としてはやはり難解で、一読了解とはいかない。提示される結論(道徳法則)は明快なのだが、そこに至る論証過程はどうしてもよく分からないところが残る。それでも外せない古典であることは間違いない。
入手可能な邦訳としては、岩波文庫の篠田訳、中公クラシックの野田訳、以文社の宇都宮訳の3つがある。最も読みやすいのは宇都宮訳だが、ちょっと高い。篠田訳も決して悪くないので、財布と相談して決めればよいだろう。
(レビュー日:2005-12-23)
とても読みやすいです。
私は専門外ですが、岩波版と比べて読みやすいと思います。ドイツ語ができないので翻訳の適否は分かりませんが、岩波版と比べて日本語としてなじみのある訳語が使われています。
この本の魅力は何と言っても各節ごとについている要約にあります。本文を読んでいるうちに頭がごちゃごちゃしても、要約のおかげでかなりすっきりします。要約がカント解釈として適切かどうかの判断は専門家にゆだねるしかないですが、少なくとも要約のおかげで一応の理解は出来ると思います。
内容に関しては、他のレヴューの通り非常に重要なことが書かれており、現在の政治哲学、法哲学、倫理学の分野では基本文献と言えるでしょう。今ではカントの道徳論に対する風当たりは非常に強いですが、カント批判を読む場合にも、カント本人が何を論じているか一応押さえておくことは必要だと思います。もちろん教養書としても優れています。
(レビュー日:2005-11-09)