巻頭は「型をおぼえるための作品鑑賞」で次の歌が紹介されている。
蛍光灯の紐を探してくらがりにてのひらふたつ泳がせてゐる 真鍋正男
歌はこう「よめ」ばいいのだなあ、という気にさせてくれ「肩肘張らないいい歌だなあ」と感心させらる。
青春はたとへば流れ解散のごときわびしさ杯をかかげて(大辻隆弘)
比喩がうまい。デモ行進の体験と知ればまた違った見方ができるかもしれない。
幸せを人間関係に置くといふ危ふきことを知らぬ幸せ(北沢郁子)
孤独の相、寂しいあたたかさを読み取れる。
さくらばな陽に泡立つを目守りゐるこの冥き遊星に人と生れて(山中智恵子)
前衛短歌の代表的女流であるが、このような現実体験を詠まれた歌もある。
我々が、縁遠いような近・現代の歌々を「読む」に際して、著者のツボを得た心得た名解説によって、歌の精髄、醍醐味が心にしわたるように分ってくる。自分も「詠んでみようか」という気にさせられるから不思議だ。
(レビュー日:2006-12-04)