荒井 千暁
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(ISBN : 4480063463, 2007-02)
実例をもとに分析する「職場の壊れ方」
あとがきにおいて本書の筆者はこう述べる。「開業していていない医師は事業についてまった
くの素人という意味でも、私は事業に関するなんらかを語る上でもっとも非常識な分類に属す
る人間だろう。」(218p)たしかに、経営コンサルタントなどが書くそれならば話は簡単なの
だが、なぜ産業医が書く『職場はなぜ壊れるのか』なのか。お門違いではないのか。
ところが、ぜんぜんそうではないのだ。本書を産業医執筆したということは、現代の労働問題
(=職場の壊れ方)が、過労死や過労自殺、PTSDなどの労働者が患う精神医療の問題にシフト
しているということを意味する。近年、ニュースなどを賑わすようになった職場鬱などもその
代表的な一例といっていいだろう。PTSDとはそもそも、本書の冒頭で論じられているとおり、
ベトナム戦争の帰還兵が患っていたような病である。それは裏を返せば、兵隊さんが戦地で非
日常的な殺戮に直面したという苦痛と、現代の労働者は「ほぼ同等」の苦痛を味わっていると
いうことでもある。
本書で筆者が指摘する原因は端的にいって、過剰な成果主義や成果主義導入によってもたらさ
れたモラルの劣化した職場という現場にある。
僕が思うに行き過ぎた成果主義というのは、会社を滅ぼすと思う。だってそれって、会社とい
う一つの「チームプレイ」を、すべて「個人プレイ」にするってことでしょ。自分の給与や評
価は自分の受け持った範囲によってのみ決定される。そうなると、隣の同僚のことなんてかま
ってられないし、余計な干渉をされるとなるとむしろ邪魔になる。
ちょっと考えるとわかることだけれども、周りの同僚が自分と成績争いをする「敵」になるの
かそれとも、目標を共有し歩みをともにする「味方」となるのか。
その考え方の違いによって、職場や仕事っていうもののとらえ方がガラリと変わってしまうの
だと思う。
(レビュー日:2008-09-03)
自分自身に置き換えて読んでみました
自分自身に置き換えて読みましたが、核心を突いている部分が
多々ありました。私自身も中途入社で数社(役所も含む)の会社
を経験しましたが、今の職場で起こっていることはまさに本書の
内容のとおりです。
職場が昔よりドライでクールになっているのはどこの会社でも
感じたものです。他人の評価が上がるのを嫌って、あえて「情報
を教えない」ことは日常茶飯事でした。コンサルタント会社では、
責任だけ押し付けられ、権限は全くない職場を経験済みです。
最高に笑ったのはゲーム感覚の人事考課です。会社で人事課は
絶大の権力を握っています。基本的な評価は人事課の意のまま
です。評価に主観や感情が入りすぎるのは当然なことで、皆、
人事課の顔色を伺って仕事をしているのが実情です。情実人事
などないことを標榜してみても、結局要職はイエスマンや茶坊主
たちで固められてしまうという会社の人事は怖ろしいほどです。
ただ、基本的な問題解決策が示されていないことが残念でした。
「仕事はスキルにあらず、アート」というのはやはりサラリーマン
として働いたことがない医師の言うことで、浮世離れ、現実離れした
考え方です。仕事がアート感覚でできるほど世の中は甘くはありません。
スキルのない人間などはけっして会社には必要ないのですから。
(レビュー日:2008-05-12)
成果主義はほとんど出てこない
“看板倒れ”という言葉がこれほど相応しい本もない。
未読者のために説明しておくと、本書では人事制度そのものについての話は皆無で
「最近〜というケースが増えています」的な語りだけ。
しかも致命的なのは、著者が専門家ではないために、その原因を全部ひっくるめて
とりあえず成果主義のせいにしてある。
多少なりとも労務に詳しい人間が見れば、それってむしろ日本型雇用の副産物
だろ!というものまで…。セクハラまで登場した時は思わず脱力。
「とりあえず成果主義が嫌な中高年が飛びつくだろ」的なタイトルをつけた編者の
罪は重い。
(レビュー日:2008-04-17)
問題提起としては良いが、結論がなぁ
「成果主義のせいで職場が壊れている」と主張している本。
しかし成果主義は昔からある。「年功序列」だって「勤続年数が長い」という「成果」を評価していたのだから。
この本を読んで考え直した結果私が出した結論は、「年功序列でえらくなった人」が「部下の能力」を評価できるわけがないのに、その辺りを考慮せずに「能力主義」に移行したのが問題の本質だ、と言う事。本来なら「能力主義で評価できる人」を偉くし、それができない人を平に戻して『から』適用しなくてはいけない評価方式を、身分を変えずにルールだけ変えたために混乱が起こったのだと。野球のチームが突如サッカーのチームになれ、と言われたようなもので、監督だってうまく選手を評価できないだろう。
この本の最も悪い点は、上記のような「結論」を何も言わない点と、「おもう」「信じる」などの描写が多すぎる点。根拠が薄弱なので結論が出せないのだ、としか言いようが無い。もちろん、自分が勤務している会社に義理立てしている部分もあるだろうが。
提起している問題点は星5つに値します。しかし、論拠薄弱で -1点。結論がはっきりしていないので -1点。提示している資料や事例で +1点。そこから「あぁ、なるほど」と納得させる内容が『中間結論』としてさえ示されていないので -1点。合計星3つになりました。
(レビュー日:2008-02-02)
朴訥と成果主義に異を唱える姿勢が誠実
産業医としての立場から、建前だけの大風呂敷を広げず
自分の立場では発言できない内容については口を挟まず
朴訥と成果主義に異を唱える姿勢が誠実である。
確かに「職をアートにまで高めよ」といった精神論的結論には
疑問符を禁じえないが、人事評価に王道が無い以上、
成果が出ているとは思えない成果主義を
批評していく姿勢は大事だろう。
(レビュー日:2007-08-08)