裁判でソクラテスが「自身がなぜ賢人であるか」についての弁明と、死刑の判決が下され投獄
されてから脱獄できるにもかかわらず、なぜ脱獄しないのかを説得に来た友人(クリトン)に
語っているのが本書である。
ソクラテスは信念の人であり、なにより論理の人である。
本書に書かれている論理は正しい。
そして、その生き方も中国は殷の伯夷・叔斉の如く清廉で筋が通っている。
しかし、一方であまりに論理と潔白さに偏りすぎており、頑なに論理のみを追い求めたが故の
成れの果てという感じもある。
仮に良くないものでも国家の決めたものであり、筋の通ったものであれば受け入れるしかない
という姿勢に本質を見失っているとすら感じてしまう。
「無知の知」だけでなく、目の前にあるものの本質を見出すことが本当の知だと思うのだが。
それは時代や政治の背景が違うが故に仕方のないことなのだろうか。
いろいろなことを考えさえられるが、哲学や思想というよりも文学として十分に楽しめるもの
である。
まずは一読してみることをお勧めする。
(レビュー日:2008-12-05)