前巻で、一気に表面化した主要人物間の感情の
もつれや葛藤に取りあえずの結論が出される本巻。
しかし、恋愛や友情といった問題に一定の進展がみられる反面、
竜児と大河、それぞれの家庭の問題が新たに浮上してきます。
そのためか、本巻は終始シリアスムード。
竜児も最後の最後まで悶々と悩み苦しむのですが、
最終的には、彼自身思いもしなかった行為に及ぶことに……!!
ところで、『とらドラ!』はいかにも典型的な「萌え系」のパッケージでありながら、
その実、描かれている物語は、いっそ古典的ともいえる教養小説であることに
改めて驚かされます。
ただ、著者にしたら、むしろ確信犯的に「偽装ラノベ」を書いているのでしょう。
ラノベ的なデフォルメは効かせながらも、奥行きと一貫性があるキャラクター造形、
現代的でテンポのいい会話によって駆動される、疾走感のあるストーリー展開、
時おりハッとするほど繊細かつ的確に書き込まれた地の文の情景描写――。
おバカなラノベ的装いを施していても、著者の筆力が
並々ならぬものであることは、誰の目にも明らかです。
普通小説では、リアリズムの呪縛のために書けないビルドゥングスロマンを
ラノベというフォーマットで、ぬけぬけと書いていこうとする著者のたくらみは、
同じくラノベ作家である有川浩さんの仕事に通じるものがあり、有川さん同様、
広く一般層にも支持される作家になってもらえたらと一読者として期待します。
(レビュー日:2008-11-03)