本当に、黙示録的な傑作だと思う。
あらゆる遺伝子がシャッフルされ、世界は渾然とした様相を呈し始める。人間の遺伝子が混入した雑草や鳥たちが農場を襲い、言語モドキで際限ない饒舌を繰り広げ、しかしそれがいつしか意味あるものへと変容していく。
人間たちにも、すでに異種の遺伝子は入り込み、DNA安定剤でその発現を抑えている。不幸にして異種の遺伝子の発現した者たちは街を追われ、ある者は難民と呼ばれて「荒地」に集い、ある者は海に還り、ある者たちは火星への脱出を試みる。百鬼夜行する世界。誰もが異形の者である世界。人間であることの終末。
終章「風が吹くとき」は、荒地で登場するライオンの容貌を持つ男の「ここに来た者はみな/その運命に従って/荒れ地に与えられた/役割を生きるのだ/お前もいずれ/その時が来たら/自分の役割に従え」(p215)という言葉が予告したとおりの結末を迎える。しかしそれはまた、救いでもあるように感じられる。
幕間劇で描かれてきたサトルが、最後に呟く言葉の痛切さ。そしてクローンと思しき女性アナの、重みのない別れの挨……プツン。
9/20の追伸 稲葉振一郎『「公共性」論』を読んでいて気がついた。この作品はハンナ・アレント、ジョルジョ・アガンベン、東浩紀などを意識している! キーワードは「難民」「動物」。
(レビュー日:2008-07-26)