どうも好きか嫌いかで評価のはっきり分かれる作品の様です。僕は好きです。一巻を初版で買っているので恐らく十年近く付き合っている作品になると思いますが、幾ら読み返してもその都度その都度に瑞々しさを感じる事のできる作品で、数ある冬目景さんの作品の中でも最も好きです。
但し、十年近くでやっと六巻。進度ははっきり言って遅いので、その為か雰囲気が何より大切なこの作品で、時代的雰囲気の変化という制約を受けています。一巻の出たのが九十九年という事ですから、あの頃は「失われた十年」の進行してゆく中での世紀末、とても閉塞感の強かった頃です。ところがその後に、一応戦後最大と言われる好景気を過ぎ、零八年現在の金融恐慌を迎えている訳ですから、作品が厳密に繋がっているか、それはかなり怪しいと思います。主人公の気持ちは一定に近い様な気もするのですが、重要人物のしな子の気持ち、性格はどうも途切れ途切れの様にも見えます。
ちょっと否定的に書き過ぎてしまいましたが、逆に言えば、私から見ればの話ですが、それ以外に問題の無い、非常に完成度の高い、作品の隅々までイメエジの浸透した作品であると思います。思うまま書く、反面わがままな書き手、小説の大家の一人、志賀直哉氏は十五年以上掛かけて傑作「暗夜航路」を完成させました。冬目景さんはそんな作家タイプの漫画家なのかもしれません。
(レビュー日:2008-11-30)