エスパーであるという理由だけで、その人たちが国家権力に狙われ、追い詰められた末、仲間すべてが、隠密のうちに皆殺しにされるという、不条理で、残酷な物語。
国家権力が、どうしてエスパーたちを憎み、抹殺しようとするのかの理由を、この物語は何ら明らかにしていないが、そこまで書いて読者を納得させるのが、大作家の義務、もう一歩踏みこんでもらいたかった。
考えられることは、日本人の民族性として、異質者を好まないということが一つ、それから、同じく民族性として、きわめて現世的で真の宗教が存在しない、従って、多くの人たちは、物理学の教科書に書かれていること以外は、迷信か、人を惑わす妄言であると信じている、だから、エスパーや霊能者をうさんくさいものと思い、彼らの登場するテレビ番組も、オカルト番組で、視聴者に悪い影響を与えると反対する。すべて、未知のものを探求する姿勢が西洋にくらべ劣る。
だが、この国にも、理解者や優しい人はいくらでも居る。清純で心の正しい人なら、いくら心の中を覗かれてもいやとは思わない。本当は、日本人も、ここに書かれているほど冷酷ではない。小説が冷酷すぎるのだ。
なお、西洋、特に、心霊研究の先進国で、降霊術の会合や、幽霊屋敷などでも有名なイギリスであれば、エスパーは、優遇されるだろう。未知分野の貴重な研究資源だから。
また、エスパーたちには、様々な活躍分野がある。犯罪捜査や、真犯人か冤罪者であるかの判定、また、国防上、外交上など。実際に欧米で犯罪捜査に貢献している人たちが少なからずいる筈だ。
しかし、さすが筒井さん、七瀬の人物像は魅力的だ。だからテレビドラマで何度も取り上げられたのでは。七瀬たちの戦う相手は、国家権力でない方がよい。単なる民間の闇組織ならば、納得できる。現在放映中のテレビドラマは、そのように修正されそうに思われる。それを期待している。
(レビュー日:2008-11-27)