本書は、大統領に「登りつめる」人たちの視点を通じて、韓国現代政治史を描いた本です。
例えば、日本が無条件降伏したとき、将来の大統領である誰それは何をしていたか
軍事政権下でどのような弾圧を受けたか、というエピソードが詰まっています。
現代史の勉強に加えて、サクセスストーリーとして楽しむこともできます。
しかし、本書には注意を払う点がいくつか存在します。
まず、大統領に「登りつめる」人に焦点を当てたため、
「登りつめた」大統領時代の具体的な政策に触れられていない場合が多いことです。
特に金泳三と金大中は、あれだけ苦労してきたにもかかわらず、
就任後の姿が見えず、物足りません。
大統領の政策に、若い頃の経験や想いが活かされているからこそ、
このような立志伝的な書き方に意味があるはずなのですが。
第二の問題は、韓国現代史を一通り把握している読者を対象に書かれていることです。
例えば、本書では、朴政権下の数々の経済政策は既知のこととして触れておらず、
私のように初めて韓国現代史の書物を手に取る者には、朴正煕は悪く書かれている印象を受けます。
新書だからこそ、初心者に対する配慮が必要であったと思います。
最後の問題は、本書は韓国現代史と銘打っているものの、
実際の内容は韓国現代政党政治史であり、
題名と内容にずれが生じていることです。
韓国のように、遅れて先進国入りした国の現代史を描くならば、
民主化以外にも、経済発展も柱に据えるべきですし、
盧武鉉は弁護士、李明博は会社員だったわけですから、
経済、社会、文化などの分野も書けたはずです。
本書は、大統領の若き時代のエピソード満載で初級者には取っ付き易いが
一方で現代史をきちんと網羅できていないため薦めにくいという
ジレンマを抱えているといえます。
(レビュー日:2008-11-30)