アメリカ大統領選の年ということもあり、アメリカ政治を読み解くためのこの類いの書物が相次いで出版されているようです。本書は宗教がアメリカ政治をどう左右してきたかについて、時代を追ってつまびらかにしています。読売新聞の現役ジャーナリストだけに、その文章はいたずらに衒学的なものへと走ることなく、一般読者が無理なく理解できる平易なものとなっていて好感がもてます。
表題には「宗教右派」とありますが、著者は現在のプロテスタントの教派を主流派、原理主義派、そして福音派に分類します。一般の日本人には原理主義派と福音派とが同列に見えるかもしれませんが、本書によれば、それぞれは純粋な信仰を目指して孤立を選んだ原理派と、孤立主義には踏み切れず社会と折り合いをつけて穏健路線を歩む福音派という具合に特徴づけられるといいます。一口に宗教右派といっても一枚岩ではないのですね。
そして70年代に「行き過ぎたリベラル」に対抗する勢力として原理主義派が力をつけてきた時期もあるものの、近年は逆に「行き過ぎた原理主義派」に距離を置きたいと考える福音派が増えていることを本書は指摘しています。共和党の大統領候補ジョン・マケインを後押ししていたのは、ブッシュ時代のような原理主義派ではないということも本書を読むとよく理解できます。
アメリカに暮らしているわけではない私のような読者にも、かの地の人々の宗教的メンタリティーが大変よくわかり、勉強になりました。
いくつか最近のアメリカ政治関連書をご紹介しておきます。
冷泉彰彦「民主党のアメリカ共和党のアメリカ (日経プレミアシリーズ 15)」
渡辺将人「見えないアメリカ (講談社現代新書 1949)」
町山智浩「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)」
(レビュー日:2008-11-08)