アメリカの宗教右派 (中公新書ラクレ) [単行本]

アメリカの宗教右派 (中公新書ラクレ)
中央公論新社 中央公論新社 / 飯山 雅史

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¥ 798 (ISBN : 4121502914, 2008-09)
(EAN/JAN : 9784121502919, 2008-09)

セールスランク : 3415位

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一筋縄では理解できないアメリカの宗教右派を分かりやすく解説してくれる


 アメリカ大統領選の年ということもあり、アメリカ政治を読み解くためのこの類いの書物が相次いで出版されているようです。本書は宗教がアメリカ政治をどう左右してきたかについて、時代を追ってつまびらかにしています。読売新聞の現役ジャーナリストだけに、その文章はいたずらに衒学的なものへと走ることなく、一般読者が無理なく理解できる平易なものとなっていて好感がもてます。

 表題には「宗教右派」とありますが、著者は現在のプロテスタントの教派を主流派、原理主義派、そして福音派に分類します。一般の日本人には原理主義派と福音派とが同列に見えるかもしれませんが、本書によれば、それぞれは純粋な信仰を目指して孤立を選んだ原理派と、孤立主義には踏み切れず社会と折り合いをつけて穏健路線を歩む福音派という具合に特徴づけられるといいます。一口に宗教右派といっても一枚岩ではないのですね。

 そして70年代に「行き過ぎたリベラル」に対抗する勢力として原理主義派が力をつけてきた時期もあるものの、近年は逆に「行き過ぎた原理主義派」に距離を置きたいと考える福音派が増えていることを本書は指摘しています。共和党の大統領候補ジョン・マケインを後押ししていたのは、ブッシュ時代のような原理主義派ではないということも本書を読むとよく理解できます。

 アメリカに暮らしているわけではない私のような読者にも、かの地の人々の宗教的メンタリティーが大変よくわかり、勉強になりました。

 いくつか最近のアメリカ政治関連書をご紹介しておきます。
 冷泉彰彦「民主党のアメリカ共和党のアメリカ (日経プレミアシリーズ 15)」
 渡辺将人「見えないアメリカ (講談社現代新書 1949)」
 町山智浩「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)」

(レビュー日:2008-11-08)

彼らは特殊な人々ではない

米大統領選では何で毎回毎回、中絶・同性愛などの社会価値が重視されるのか?
ほかの先進国には見られない宗教の突出ぶりが不思議だったが、その背景を独立戦争以前に遡って解説する。
ヨーロッパから入植した人は宗派ごとに固まり、独立時の東部13州は各州ごと"国教"があった。
政教分離は、連邦政府の権力者が自分の宗派を他の州に押し付けるのを防ぐためだった。
なかでも18〜19世紀の”大覚醒”運動が強烈だ。馬に乗った牧師が各植民地を巡回し、何万人もの大群衆を前に、吼え、わめく。もちろんマイクなしで!。信者は熱狂し陶酔した。
現在隆盛を誇るメガ・チャーチの源流がここにある。
共和党政権の黄昏と共に宗教右派も方向を見失い漂流しつつあるが、アメリカ人のDNAが健在な以上、いずれ再び団結し大統領選の帰趨を決める存在になるのではないか?
(レビュー日:2008-11-06)

非常に分かりやすいです

「あとがき」より抜粋。
「宗教右派について書かれた文章は、ほとんどが彼らを批判することに性急で、その「なぜ」についてはあまり掘り下げてこなかったように思う」

本書は、現ブッシュ政権下で大きな影響力を持ったアメリカの宗教右派について解説した本です。
著者は右派について肯定的でも否定的でもありません。
客観的なスタンスは読んでいて好感がもてました。

主としてアメリカ国民の4分の1を占めるという福音派について取り上げていますが、それと同時に、日本人から見ると何がどう違うのか分からないキリスト教プロテスタントの各宗派が、どのように成立し、アメリカという国の成り立ちにかかわってきたか、その過程にも触れています。
アメリカの政治と宗教については、複雑に入り組み、これ、というような簡単な答えの出ない問題ですが、本書ではかなり分かりやすく解説されています。

大統領選直前に読んだので、目からうろこがぼろぼろ落ちました。
攻撃的で、その言葉遣いは野卑にさえ思える右派指導者たちが、なぜそれほどまでに人々の支持を集め、影響力を持ちえるのか、すんなり納得がいきます。
(レビュー日:2008-11-03)

アメリカ政治における宗教要因のダイナミクスを描いた好著

16世紀の宗教改革から筆を起こし、2008年の大統領選挙まで、宗教がアメリカの政治にどのような影響を与えているのかを、非常にわかりやすい文章で、分析している好著。新聞を読んでいても「宗教右派」「原理主義」「福音派」など様々な用語が出てくるが、それが何を意味するのか、ということも、「なるほど」とわかった。宗教、二大政党の動き、経済の動き、人種問題、文化戦争など様々な要因が絡み合って、アメリカ政治における宗教の役割・重要性が大きく変動している(そして現在も)ダイナミクスを見事に描き出しているように思えました。アメリカにおける「リベラル」と「保守」の違い、モンキー裁判、日本とは異なった意味での「教科書検定」があり教育委員会委員選挙が重要なことなど日米の差異を平易な文章で記述している。アメリカ通の重鎮ジャーナリストによる優れた書物だと思います。
(レビュー日:2008-10-14)

米国史と連動する宗教右派の歴史

アメリカの本を読んでいると、メソジスト、パブチスト、長老派などアメリカでしか聞かないような教派がたくさん出てきて、日本人には何が違うのか良くわからないのだが、清教徒入植から起筆され通史的にアメリカ宗教史を解説した本書を読むと、比較的整理されて頭に入る。

ギングリッジやブッシュジュニアの過度ともいえるキリスト教福音派への支持から、宗教右派の勃興は最近の出来事のように感じるが、カトリックを除いてほとんどが原理主義的な入植者をルーツに持つ米国は、歴史的に何度か宗教右派の波があったことがわかる。何万人がライブのように熱狂的に説教を聴く、成人の4割が「ボーンアゲイン」したと答える、アメリカ独特の宗教スタイルは独立以前から確立されたものだ。しかし、中絶、同性愛の是非が政治課題になった70年代以降、宗教右派が政治に強く関与するようになり、波を打つように共和党支持になったというのは、それ以前と顕著に異なるという。60年以上にわたる、各教派の政党支持の傾向を表したグラフは非常に興味深い。また、同じ教派でも、主流派、福音派、黒人教会はぜんぜん別物というのもアメリカ独特だ。新興宗教で同じ名前なら、ひとつの権力しかないような気がするのだが、そのあたりがアメリカらしい。

新書ではなく、もっと厚くても読みがいはあったんじゃないかと思うが、内なるアメリカのダイナミズムを伝える好著。
(レビュー日:2008-10-02)

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