シリウスの都 飛鳥―日本古代王権の経済人類学的研究 [単行本]

シリウスの都 飛鳥―日本古代王権の経済人類学的研究
たちばな出版 たちばな出版 / 栗本 慎一郎

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¥ 2,310 (ISBN : 4813319068, 2005-10)
(EAN/JAN : 9784813319061, 2005-10)

セールスランク : 134380位

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天才栗本慎一郎がやってくれた。

まず、この本は読者を選ぶので注意されたい。
次のような人にとっては星ゼロのトンデモ駄本となろう 。読んでも拒絶反応を引き起こすか、時間と金が無駄だったと感じるのが関の山だから読まない方がいい。
教科書的知識以外の歴史は受け付けられない人。何らかの教団の熱心な信者。デニケン等の宇宙考古学の信奉者。左翼の人。右翼の人。人間は理性的動物なのだからイジメ問題はいじめっ子の理性を曇らせたいじめられっ子の側に問題があると考える人。民族の生存権を賭けた闘争においてはジェノサイドも已む無しとして思考を停止させる人。蘇我氏は蘇我天皇家だったなどとブっ飛んだ事を云う坂口安吾は読まない人。皆殺しの富野のアニメなんて嫌いだという人。

逆に次のような人には星5つ以上の興奮を喚起してくれるだろ。
天皇霊スメラガイストのルーツと本質に関心のある人。日本民族の魂の原郷ヤマトに心よせられる人。西アジアの歴史やスキタイの文化やミトラ教に心ひかれる人。人間には他者を虐めたり他の共同体員を虐殺することに積極的主体的に関わってしまう業があると自覚しており、かつその業の制御に関心をもつ人。蘇我氏は蘇我天皇家だったとブっ飛んだ事を云う坂口安吾が面白く読める人。皆殺しの富野のアニメに感動してしまう人。

この本は安易な答えを提供する本ではない。考える材料を提供する本である。最後にこの本を読んだ偶感を富野アニメの最高傑作「伝説巨神イデオン」のセリフから引用させてもらう。
「あなた方が良きものなのか、われわれが良きものなのか、いや、ともに良きものかもしれぬし悪しきものかもしれぬ。それを私は知りたい」
(レビュー日:2007-03-26)

聖方位の観点から飛鳥謎解き

 なぜか読んでみたくなる書名である。
 本書の副題はあえていかめしくしているが、本題は「シリウスの都=飛鳥?」との謎解きのネーミングにつられて読んでみたくなるように設えている。
 古代ペルシャでは副太陽とも言うべき一番明るい星シリウスを崇拝の対象としていた。古代日本でもオオボシ(大星)と言われていた。日本にある聖方位はペルシャのこの宇宙信仰が起源ではなかろうかと謎解きは始まる。我々が確認できるのは、例えば、ペルシャのゾロアスター神殿と全く同じ方位と北入りの前方後円墳(および神社または寺院、たとえば鹿島神宮、原法隆寺)が日本にあるという事実に注目すべきである。蘇我氏と聖徳太子は、飛鳥の地に、最初はこっそりと、後に堂々と、聖方位が持ち込まれた。再建された法隆寺は、なぜか真っすぐ南北軸には乗せず、4度だけ北北西に傾けられている。それは大和には(後に大化改新のクーデターが起きたように)蘇我氏一族への意識的抵抗勢力があったからである。
 現代日本文化の原点である「飛鳥京と日本古代王権」の革命の後をたどり、蘇我氏のルーツはサカ族で、それがソガになったという。アスカのアは「聖なる」の意の接頭語でスカは蘇我だというのである。蘇我氏は比較的新しい渡来民族で、その経済人類学的可能性を主張している。
 我々は、もう少し外に関心を持って、その関わりの中で、日本史を考えていかなければならないということを教えられる(雅)
(レビュー日:2006-01-30)

縄文的価値に異質なものを加えた遊牧民系の蘇我氏

 まず渡辺豊和氏の二十年来の研究から、縄文時代に全国規模で存在した太陽信仰に基づく建築物と聖地の精確に篭目状に並ぶネットワークが想定され、そこに蘇我氏が持ち込んだユーラシア遊牧民のミトラ信仰に基づくシリウス崇拝による建築物の'方位の変更’としての「聖方位」が語られる。ミトラ=弥勒だとするこの研究は、単なる想定ではない事実であると、メソポタミアからユーラシア遊牧民を経て日本へと伝わる文化的対応が具体例で提起され、シルクロードから中国、朝鮮を経由する路よりも北の草原のルートが近距離で安全であり、そちらからの文化流入がより主流だと見直しを提起する。無文字文明が決して遅れた文明とはいえない等の経済人類学の諸説が敷衍され、遊牧民の文明がより高位にあったと歴史の見直しを主張する。縄文時代から存在する冬至と夏至線を交差させて出来るカゴメ状のネットワークについてとそこに変更を加えた蘇我氏の聖方位について全国的にかなり詳しい数字が語られ、興味有る読者の発見に役立つよう表がついている。
 蘇我氏は遊牧民的な双分制と律令制、弥勒信仰や上天思想、星辰信仰を持ち込み、自ら双分制の運営に失敗し内部より暗殺されたが、武士団、山、金属採掘、水利事業、火を巡る民間信仰を残すことになった。
 この日本文化の二重性が現代まで日本史の二重性を規定した。
 ヤマトの地は縄文ネットワークにおいて重要であり、そこに乗っかって変更を加えるため蘇我氏は大陸から北日本を経てやってきた。
 飛鳥とはアという尊称と蘇我の合成であり、ソガはサカ族の可能性がある。そして白鳥ルートによる日本への渡来と信仰から飛ぶ鳥となった。
 遊牧民文明の世界史的再評価とその宗教について語られるが、事実の究明が主で、世界観そのものにもう少し内在的に入って行くことも読者に残された課題かも知れない。
 
(レビュー日:2005-10-08)

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