「フルメタル・パニック」シリーズは、
短編集(コチラは漢数字がサブタイトルに入る。『放っておけない一匹狼?』『本気になれない二死満塁?』……)
と長編の2パターンで刊行されているわけだが、どちらも退屈せずに読むことができる。
“戦争ボケ”の主人公、若年ながら熟練の傭兵である相良宗介が、“平和ボケ”の日本に、千鳥かなめという少女を護衛しにやってくるわけだが、この設定が見事で面白い。
たいていは平和ボケしてる主人公が、非日常の世界に放り出されてあたふたしながら、
だんだんと適応していったり自分の居場所を見つけていくわけだが、
「フルメタル・パニック」はその逆をやる。
『“戦争ボケ”が平和な世界に送り込まれたら?』
だがしかし、この例は斬新とはいえない。
『熟練の海兵隊がハウスキーパーをしたなら?』『殺し屋が隣人になってしまったら?』などと、
平和な日常のなかに火薬の匂いをさせた異分子が紛れ込む作品の例は少なからずあるのである。
が、「フルメタル・パニック」はそのレベルが違ったのである。
相良宗介は“戦争ボケ”、まさしく戦争しか知らなければ、戦争が価値観の基準。
戦争と戦争の合間に団欒に安らぐこともなければ、「ここを乗り切ればこの世界ともおさらばだ」と考えることもない。
そこがキモであり、その点をコメディに活かし、いざという時のシリアスとの対比させる。
まさに一石二鳥、いや、そこを基点にしてかなめとの恋を展開させ、さらには恋敵テレサ・テスタロッサを登場させる。
二鳥どころか、一石四鳥である。
ごった煮ながら、それゆえの面白さを見せ付ける一作だ。
また、現実世界とは微妙に違う世界観を追ってみるのもいい。
ASという兵器はもちろんだが、ゴルバチョフが暗殺されてペレストロイカがなされていなかったりと、いろいろ面白い齟齬も楽しみの一つである。
(レビュー日:2005-12-21)