青春時代、自分の居場所を探して、新宿の無方向性に身をゆだねてさまよっていたというベルク井野店長。放浪の果てに出会ったのが、詩人であった父の代からずっと「そこ」、「新宿駅東口改札横」にあった「ベルク」だったという。
おそらく、他の場所でもそれなりに魅力的な店の経営を成功させるだけの充分な力のある方なのだろうが、巨大資本と闘いながらも、この場所にこだわり続けるのは、「そこ」が、ただの「場所」ではなく、井野店長にとって、自らのアイデンティティとも言うべき「場」だからではないだろうか。
自らの存在を否定しようとするものに対しての闘い・・・
だとすれば、この闘いは、決して他人事ではないのだ。
店に入って感じる、ひとつひとつの魅力が、たくさんのこだわりと心意気に支えられていることに納得のベルク物語。
「何もせず、ぼーっと見ているときの方が木樽の中のワインのように熟成されていく。
一見無駄に思えるものが、じつは一番大事、ぜいたくな時間。」と、井野店長。
経営を目指す人のみならず、生き難い時代を生きる若者の心にも、まっすぐに届く熱い言葉が語られている渾身の一冊。「新宿駅東口」の今が見えてくる。
(レビュー日:2008-11-07)